第7話
「っっ。そうか。それほどまでに言うのならば、そうしよう。」
一瞬ためらいを見せた陛下は、何事もなかったかのように冷静さを顔に写し、立ち上がる。
これが、コーヒー王国国王、ビター・ドリップ。
厳格な性格で、自身にも回りにも甘えを許さない、我が国の象徴とされる方。
子供の頃から私は、この方だけを見てきた。
生まれた時から憧れていた人。自分のすべてを捧げてでも、愛されたいと思ったはじめての人。
「早く治せ。小町。」
「っっ。」
それが、ただ手を握られただけでこんなに、嫌悪感が生まれるなんて。
「……はい。ありがとう、ございます。」
「……うむ。」
震える手を悟られないように、そっと引き抜いた。陛下は一瞬気にするような素振りを見せたけれど、それももう、いつもの無表情にかき消される。
どうせこの人は私なんて存在、とるに足らないと思っている。こうしてわざわざ御見舞いに来てくれたのだって、政治的観点から。
未来の后妃を国王自らが見舞ったとなれば、仲睦まじい様子が流布され国が活気づく。
この人は国王として、すべきことをしている。ただそれだけ。
それに、私が8才ということは、ほぼ私が未来の后妃になることが決まっている頃。だって今、この王宮で未来の妻候補として住んでいるのは私だけなのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます