第7話

「っっ。そうか。それほどまでに言うのならば、そうしよう。」




一瞬ためらいを見せた陛下は、何事もなかったかのように冷静さを顔に写し、立ち上がる。




これが、コーヒー王国国王、ビター・ドリップ。




厳格な性格で、自身にも回りにも甘えを許さない、我が国の象徴とされる方。



子供の頃から私は、この方だけを見てきた。




生まれた時から憧れていた人。自分のすべてを捧げてでも、愛されたいと思ったはじめての人。



「早く治せ。小町。」


「っっ。」



それが、ただ手を握られただけでこんなに、嫌悪感が生まれるなんて。




「……はい。ありがとう、ございます。」



「……うむ。」




震える手を悟られないように、そっと引き抜いた。陛下は一瞬気にするような素振りを見せたけれど、それももう、いつもの無表情にかき消される。



どうせこの人は私なんて存在、とるに足らないと思っている。こうしてわざわざ御見舞いに来てくれたのだって、政治的観点から。



未来の后妃を国王自らが見舞ったとなれば、仲睦まじい様子が流布され国が活気づく。


この人は国王として、すべきことをしている。ただそれだけ。



それに、私が8才ということは、ほぼ私が未来の后妃になることが決まっている頃。だって今、この王宮で未来の妻候補として住んでいるのは私だけなのだから。

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