第6話
その鳥肌を隠そうと腕をすりながら、自分に言い聞かせる。
冷静になれ。今このビター様はまだ、彼にはなっていない。
私を蔑み、殺したあの彼には、まだ。
だから、怪しまれてはいけない。私が今こうなっている以上、彼から逃げるにはまだ、時期早々なのだから。
何月何日までは分からないけれど、彼の態度や鏡に写る自分を見て予想できる。
私は今、8才くらいであるということ。それなら、陛下は今18才ということになる。
元々幼馴染みである私と陛下は、子供の頃からよく顔を合わせる機会が多かった。だから将来后になるかもしれないとはいえ、現時点では候補にすぎない私のお見舞いをしてくれる。
昔の私なら、飛び上がって喜んだだろう。無邪気にはしゃいで、病気の身だというのに陛下が少しでも部屋にとどまるよう、いっぱい喋ったり駄々をこねたりしたかもしれない。
でも、今の私にとってはありがたくもないただの迷惑にすぎない。
「陛下、わたくしのお見舞いにご足労いただきまして光栄でございます。しかし大切な陛下の御身に病気をうつしてしまってはいけません。わたくしは平気ですのでどうぞお仕事に戻られてくださいませ。」
何度も心のなかで大丈夫と唱えた。早鐘を打つ心臓の音が陛下に聞こえてしまわないよう、強く手で抑える。
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