第3話
「小町様。小町様!」
「う、んん、もう少し寝かせてー。お母さん。」
「……寝ぼけてらっしゃるのですか?小町様!」
「え?」
目を開ければ、見慣れた天井、見慣れたベッド。
「ささ、お着替えをお持ちしております。お早く!」
「なんで、婆やが。」
「はい?」
首を傾げるこの侍女に最後に会ったのは、あの日。燃える炎の中、泣き続ける彼女を見て以来だった。
「どう、して。」
手を見つめれば、見慣れたその手。真っ白な、仕事も家事もしたことがない、可愛い女の子の手だ。
「お嬢様?」
ベッドから飛び降りて窓の外を見れば、心臓が張り裂けんばかりの悲鳴を挙げた。
(まさか、まさか、まさか!そんなはずない!)
「小町お嬢様、はしたのうございますよ!」
綺麗に手入れされた庭園。咲き誇るバラは王家の紋章の形に植えられている。
ここはコーヒー王国。国王の名前はビター・ドリップ。
私の予想が確かなら、彼は今18才。先代が若くして崩御され、彼は15の時にこの国の王になった。
類い稀なる彼の才能と、先代の威光もあり、彼は若くても立派な王になった。そして彼が王になって3年目の誕生日に、彼のお妃候補が王宮へ集められる。
彼女たちはこの国の上流貴族の家の出であり、将来陛下の后となるべく、あらゆる教育を受けてきた子ばかり。
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