第66話

「コレ、ここに置いてくから。」



「え?」



「……え?」




やはりな。どうせろくでもないことを考えているに違いないのだ。



和子と同時に、メノウも呟くように声を漏らした。戸惑いから見るとこの娘も聞いていなかったんだろう。目が右に、左に泳いでいる。




メノウを振り返った和子が、信じられないものを見るような目で雷知を見ている。



「なにを、言ってるの?」



「うーん。話せば長いんだけどね。」




大きなため息を吐いた雷知は、その辺の床の上に足を投げ出して座った。



こいつは、いくつになっても餓鬼のような奴だ。今のこいつは王の品格どころかその辺の平民よりも劣って見えるぞ。




「僕には妻と息子がいるわけ。息子は僕の国の跡継ぎなんだけど、彼がコレを嫌っててね。処分するにも後味悪いし、ちょっと困ってたわけ。そしたら、和子が目覚めたって言うじゃない?ならあげちゃおーって思ったんだ。」



「っっ。」




雷知の言葉に、和子が顔を顰め、メノウが悲しみを漂わせる。ふむ、和子が不快に思っている匂いだ。



和子の香りは好きだが、人の言う不快感というのは苦しみなど、負の感情と同等。




それならば。



「わ!火炉ってば!また燃やすのはやめてよ!」



「なぜだ?」




変な奴だ。和子を不快にさせたのだから俺がお前を燃やしてもなんら不思議はなかろうに。

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