第65話
すると、メノウの挨拶を受けた和子が柔らかい笑みを零した。
「私は和子です。よろしく、メノウさん。」
……口調から察するに、和子はどうやらメノウを目上と判断したらしい。
「グフッ。」
耐え切れなかった雷知が噴き出すがそこはどうやら気付かないふりをするようだ。
「あの、和子様。」
「なんでしょう?」
おどおどとした口調。表情もどこか頼りなさげだ。この高慢と慢心の塊のような雷知とはかけ離れている。
それに、なんとなく違和感を覚えるのは俺だけか?
「私のことは、メノウと呼び捨てにしていただいてかまいません。」
「うーん、そう、ですか?」
「はい。それに、敬語も……。」
「そう、です、か、な?」
雷知が、この部屋に入ってからずっと……。
「じゃあ、メノウ。よろしく、です。」
「ふふっ。」
「えーと、敬語はこれから、ということで。」
「はい。」
"自分の娘"を、視界に入れていない。
「そうそう、これからだよ、和子ちゃーん。」
立ち上がった雷知は扇子をひらひらさせる。イラつくな。髪と一緒に燃やしておけばよかった。
「ん?」
首を傾げる和子から、雷知の視線は俺へと移ろう。
その目が何かを語っているが、それを読み解く必要もないだろう。
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