第67話

「……まぁいい。置いていけ。」



「へ?」




どうせ、こいつを燃やそうと思ってもいちいち骨が折れる。見ていれば分かる。こいつはただ国を作っていただけではないらしい。




みなぎる力を秘めそれをひた隠しにしている。そしてそれを俺が見抜いているのにも、当然気付いているだろう。



「いいの?」


「ああ。」


「火炉?」




和子が目を見開いて俺に何かを訴えてくるが、これは変わらない決定だ。




「もういいだろう?帰れ。」



「助かるー。」




早々と暗闇を出した雷知。片足をツッコむも何かに引かれるように歩みが進まない。



ふふ、ここは"徹底"しないと、バレてしまうぞ?



「っっ、じゃ、あね。」


「父さま!」




メノウの叫びは届くことなく、こちらを見ることのない雷知は暗闇へと姿を消す。



「……あ。」



一歩、また一歩と、取り残された少女が歩を進めるも。差し出した手で暗闇はつかめない。





「どう、して。」




和子のつぶやきに、メノウが唇を強く噛む。



そしてすぐさま上げられた顔は、妙な表情で。




悲しいとも叫ぶ、笑顔だった。




「申し訳ございません。どうやら私はここで、お世話になることになった、ようで。」




絞りだした声音は悲しいと叫んでいるのに、言葉はそれを語ってはいない。

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