第63話
side 火炉
「ふっ。」
「ね、面白いよねー。」
思わず笑うと、雷知が目をキラキラさせて俺に同意を求めてくる。
「まぁな。」
雷知の子を前に困惑顔の和子。年を聞いて判断付きかねているのだろう。
「和子、大丈夫だ。ようやく学校に通い始めたくらいの年だろう。」
「え、学校があるんですか?」
……一体、どこに食いついてくるのだ。
「ふはっ、変なとこツッコむね和子は!」
「だって、鬼の国に学校というものがあるのは初耳なので。」
確かに、人の世界でさえ今、学校という存在は珍しいだろう。ある程度富んだ国でないと学問というものは流布しない。
鬼の国や帝都では当たり前にあるものが、和子がいた世界ではなかったのだろう。
今思っても不思議で仕方がない。和子はなぜ、そんな世界で生きていたのだ?
捨てられたウツワは、子を産み落として死ぬはず。しかし和子には母親の記憶があった。
『愛された覚えはありませんが。』
寂しそうにも見えず、憎悪も見えることなく和子はそう言っていた。和子の感情の動きも気になるがそれよりも。
---すぐに死んだはずのウツワが和子の記憶に残るまで生存していた。
その事実が気になっていた。
「えー、とにかく、まだ子供なんですね?」
「そうだよ。」
まだ疑っているらしい和子に雷知が答えると、納得いかないとばかりに首を傾げている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます