第63話

side 火炉




「ふっ。」


「ね、面白いよねー。」




思わず笑うと、雷知が目をキラキラさせて俺に同意を求めてくる。



「まぁな。」



雷知の子を前に困惑顔の和子。年を聞いて判断付きかねているのだろう。



「和子、大丈夫だ。ようやく学校に通い始めたくらいの年だろう。」



「え、学校があるんですか?」



……一体、どこに食いついてくるのだ。



「ふはっ、変なとこツッコむね和子は!」



「だって、鬼の国に学校というものがあるのは初耳なので。」




確かに、人の世界でさえ今、学校という存在は珍しいだろう。ある程度富んだ国でないと学問というものは流布しない。



鬼の国や帝都では当たり前にあるものが、和子がいた世界ではなかったのだろう。



今思っても不思議で仕方がない。和子はなぜ、そんな世界で生きていたのだ?




捨てられたウツワは、子を産み落として死ぬはず。しかし和子には母親の記憶があった。




『愛された覚えはありませんが。』




寂しそうにも見えず、憎悪も見えることなく和子はそう言っていた。和子の感情の動きも気になるがそれよりも。





---すぐに死んだはずのウツワが和子の記憶に残るまで生存していた。




その事実が気になっていた。




「えー、とにかく、まだ子供なんですね?」



「そうだよ。」



まだ疑っているらしい和子に雷知が答えると、納得いかないとばかりに首を傾げている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る