第62話

だから、ね?鬼の"冗談"はちょっと、やりすぎ。




「ねぇ、あなたは?雷知の従者?」



でも私は気づいていた。雷知の気持ちに。だけど私は、最低なことに気付かないふりをしたんだ。この関係が壊れてしまうことを恐れて。



この場にそぐわない女の子。雷知は王になったんだから従者がいてもおかしくはない。だけど、雷知がここまで一緒に連れてきているということは、従者の中でもより雷知の傍にいるということ。



「ん?僕の娘だよ。」


「へ?」




雷知が女の子の頭を撫でると、その子はぎこちなく笑った。



この子が、雷知の、子供?




真っ青な髪はさらさらとたなびいていて、額にある一本角はまだ子供だからか小さい。だけど恰好が。王族の身なりとは思えない。顔だけ見て、雷知の子供だと言われれば、うーーーーん。




「目元が、そっくり?」


「すごい絞り出したよね!」




思わず苦笑いを零した。ひいき目で見ても、うーん。女の子だからか雷知に似ているところはない気がする。




「ほんとにさー、なんで僕に似なかったんだろうね?そしたら今よりもっと可愛いはずなのに。」



「そんなこと言ったらだめですよ。」




おどおどしている女の子。鬼の子供を見るのは始めてかもしれない。月夜と初めて会ったのは子供の時だったけど、それでも私から見たら結構な年齢だったから。




「あなた、お年は?」


「……54歳です。」



……うーん。これは、子供なのか、子供じゃないのか?

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