第60話

そうすることで、火炉の怒りを買って遊ぼうとしている。




そんなの私はお見通し。そして火炉も。



「あちち!」


「ふはっ、自分で消せ、そのくらい。」




よく分かっているからこそ楽しそうに笑っているの。




「もう。」



諦めたように、雷知がフッと息を吹きかければ、焼けた髪を残して火炉の炎が消える。



「冗談にしても酷いよねまったく。」




ぶつぶつ言いながらも、雷知がふわり、ふわりと手で撫でれば、焼けていた髪は元の通りサラサラに、傷一つない姿に戻っていく。




何度見ても、雷知の能力はすごい。すごいと思う暇もなく一瞬で傷は癒えていく。




と、言っても。火炉はかなり手加減をしていたみたい。見えた傷はほとんどなくて、どうやら髪だけを綺麗に燃やしていた。




「なんで和子は僕を助けてくれないのさ?」



「俺がそう命じているだからだ。」




不満そうな雷知に、火炉が割って入る。



「なぜ?」


「知っているくせにか?」


「ふふっ。」




そう、雷知は知っているはず。



髪を燃やす程度でも、人や弱い鬼が触ると大変なことになることを。



私があの炎に少しでも触れれば、私の体は瞬く間に燃え尽きてしまうだろう。




火炉の炎は特別。燃えやすいものがなくても燃え移り、それはすべてを焼き尽くしてしまう。

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