第60話
そうすることで、火炉の怒りを買って遊ぼうとしている。
そんなの私はお見通し。そして火炉も。
「あちち!」
「ふはっ、自分で消せ、そのくらい。」
よく分かっているからこそ楽しそうに笑っているの。
「もう。」
諦めたように、雷知がフッと息を吹きかければ、焼けた髪を残して火炉の炎が消える。
「冗談にしても酷いよねまったく。」
ぶつぶつ言いながらも、雷知がふわり、ふわりと手で撫でれば、焼けていた髪は元の通りサラサラに、傷一つない姿に戻っていく。
何度見ても、雷知の能力はすごい。すごいと思う暇もなく一瞬で傷は癒えていく。
と、言っても。火炉はかなり手加減をしていたみたい。見えた傷はほとんどなくて、どうやら髪だけを綺麗に燃やしていた。
「なんで和子は僕を助けてくれないのさ?」
「俺がそう命じているだからだ。」
不満そうな雷知に、火炉が割って入る。
「なぜ?」
「知っているくせにか?」
「ふふっ。」
そう、雷知は知っているはず。
髪を燃やす程度でも、人や弱い鬼が触ると大変なことになることを。
私があの炎に少しでも触れれば、私の体は瞬く間に燃え尽きてしまうだろう。
火炉の炎は特別。燃えやすいものがなくても燃え移り、それはすべてを焼き尽くしてしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます