第59話

「雷知。」


「んー?」



見た目はド派手な王様だけど、雷知の能力は健在で。




「ありがとう。」



雷知の優しさも、そのまま。



一瞬目を見開いた雷知は、男なのに花が咲いたように笑う。




「和子だ。和子がいる。」




その瞬間、私の体は甘い香りに包まれて、それが雷知の温もりであることをすぐに理解した。




「和子ー。和子わこ!」


「うん。」




子犬のような雷知。子供のような雷知。どこかの国の王になっても、こんな格好をしていても雷知は、雷知のまま。




「離れろ。」


「ぎゃ!」



だけどそんな私たちの久しぶりの再会を火炉が放ってみておくわけもなく、ボッという音と共に、雷知が私から飛びのいた。




「アチチチチ!」




雷知が自分の頭をはたく。それもそのはず。火炉が髪を燃やしているのだから当然だ。




「あれ?」



そんな雷知を見ていると、おどおどとした表情で彼を見つめている少女を見つけた。



「あなたは?」



「和子って!消火してよ消火!」



「ごめんね雷知、無理かな。」



「ひどい!」




こういう所は変わっていない。




自分で消せるそれをわざと私に消させようとしている。そんなこと、不可能なのに。

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