第58話
「……雷知?」
「そうだよ。やっほーって。」
雷知、なんだけど、なんだろう?
「雷知、だよね?」
「……どれだけ信じないのさ?」
なんか、違うような?
「あのね、あの。」
「うん?」
寝床の端に腰かけて、寝ている私の額の髪を爪先でどかした雷知は……。
「王様っぽい。」
「やっぱりい!」
すごく、王様って、感じ。
「この日のために作ったんだよねぇ。どう、似合ってる?」
「似合ってねえ。」
その見た目にイラついたのか、火炉が全否定する。
豪華絢爛な着物に身を包んで、手には扇子。帝都の皇帝だったお爺さんでさえこんなに豪華な見た目じゃなかった。
「火炉もこういう恰好すればいいのに。」
だけど相変わらずそれを気にすることのない雷知は着物の裾を張ってくるりと笑って見せた。
ああ、このやり取り久しぶり。私の目が覚めても雷知と地影には会えずじまいで、数週間が経っていた。
火炉はなんでもない風を装っていたけど、きっと会いたかったはず。そして、私も。
「雷知、元気そうだね。」
「ん。和子は、きつそうだね。」
そう言って雷知が私の額に指先を這わせた。その瞬間、一瞬で体の辛さがなくなる。
「え?あ。」
「うん。」
満足げに頷いた雷知。とっさに触れば、首元にあった傷も無くなっていた。
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