第56話
「和子、大丈夫か?」
「……ん。大丈夫、です。」
羽水が危惧していた通り、数日後私は熱を出した。繰り返し新しい傷ができて治ることのない私の首元は熱を持って、それは全身へと広がった。
私の横に寝転んで心配そうにする火炉は、ひんやりとした布を額に当ててくれる。
火炉の食事は、私にとってもとても大事なもの。私の血が、火炉に力を与え、命を与えている。
だけど本当は分かっていた。
火炉は私だけを食べるため、最低限の食事に抑えていて、それでも空腹な場合は、私と同じ物を食べて紛らわしている。
鬼の食事は特別で、良いものを食べれば力が湧き、活力へと変わる。
いくら私がウツワであって、火炉にとっての最高の食事だとしても、満腹にはさせてあげられない。
それどころか、少しずつ分け与えた力を、時がくれば返してもらわなくちゃいけない。そしてその行為は極度の空腹を伴い、鬼にとっては最高の試練になる。
つまり火炉は、私といる限り、満腹になることはない。それどころか飢餓期を呼び出し、苦しめる存在。
そして、私も。
火炉と番う限り、いえ、きっと生まれ持って私は……。
---自分への愛を引き換えにしなければ、子は望めない。
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