第55話
現に彼らはに他に移り住むこともせず、こうして火炉のために働いている。
90年って、途方もなく長い。人なら死んでしまうし、人よりも長命な鬼にとっても短くはないはず。
そんな中彼らは、火炉を待っていた。
それも、あの部屋を業火で包み、唯一月夜しか通さなかった火炉の拒否を知っていてもなお。
「和子様は、相変わらず素敵です。」
「よし、今すぐ殺してやる。どうだ?焼かれるか?」
「王。僕の戯言など聞き流していただけませんか?」
それなのにこうして、何事もなかったかのようにいつもの生活を続けている。
鬼である、というだけでそれを否定する者もいるだろうけど、桜土や羽水の中にあるのは、確実に信頼という絆であると私は思っている。
支えなんていらないかもしれない。火炉は私が力を奪った今でも強いのだから。
それでも、やっぱり。
仲間を必要とする時は、必ず訪れるから。
そんな時、後ろを振り返って、再び前を向いてたくさんの信頼する者たちと力強く踏み出すのか、それとも。
---2人きりで、歩を進めるのか。
その時私は、きっと火炉の隣にいる。だけどその後ろで後押ししてくれる彼らがいれば、もっと心強い。
「そういえば雷知はどうされますか?」
「しつこいぞお前。」
そう、そこに雷知と地影がいれば、もっといいのかも、しれないけれど。
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