第54話
side 和子
「えと、なに?なんだろう?」
火炉と羽水が楽しそうに笑っている。仲直りしたのはいいけど、それがなぜなのか私にはさっぱり分からなくて困る。
だけど。
「なんだか、もう、いいのかな?」
羽水が死なないなら、なんでもいいかもしれない。
鬼たちの冗談は正直度が過ぎていて、私にはついていけないことが多い。
あっさりと従者を殺してしまったり、仲間同士でケガをするほどの喧嘩をしてしまうこともしょっちゅう。
それだけ鬼の中で命というものが軽いという証拠。
理解ができないけれど、それが鬼というもの。
毎日命を食らい、それを糧に力を得る。鬼は、殺した家畜を料理してしまい、その材料すらも見ることなく食べてしまうことの多い人間よりよほどその重みを知っている。
だけど、見えているからこそ軽んじる、ということもある。
命のやり取りが当たり前であるからこそ鬼たちはそれそのものが軽いとも感じてしまう。
今までは、それでよかったけれど。
私たちの今は、違うから。
「和子、もういいだろう?」
「……本当に、分かっています?」
「ああ。」
即答の火炉。本当に分かっているのかな?
私を見守る90年以上の歳月を、この鬼たちは火炉のために過ごしてきた。
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