第53話
「別に火炉に、仲間の気持ちを理解しろとは言いません。」
まっすぐに王を見つめるその瞳は、眠りにつく前から、この方がウツワだと分かる前から見てきたものだ。
和子様は強い。我が王に物怖じせず、まっすぐに愛をぶつけることができるのも、この方の強さゆえ。
「だけど、あなたにも、私にも、大切な者たちがいる。それを理解できないのなら、私はあなたの傍にはいられない。」
残酷なその言葉に、王が目を見開いた。
僕も驚いた。我が王を"諭す"なんて。
「ふっ。」
「さすが、和子様ですね。」
「え?」
嬉しそうに笑う王と、和子様の腕の中の僕も目を合わせて笑い合った。
小さく頷いた王は、殺気と炎を収め、小さくため息を吐く。
「負けだな、俺の。」
「そうですね。王の負けです。」
僕の言葉に一瞬驚いた表情を見せた王は、大きく口を開けて笑う。
「そうだな、俺の負けだ。」
訳が分からない、そういう表情をしているのは和子様だけ。だけど僕と王にとっては、大きすぎるほどの収穫があった。
「和子様、ありがとうございます。」
「え?」
我らはこれからも強くあり続けるだろう。人にあって鬼になかった結束という名の愛を、和子様の存在が知らしめ、そして導いてくださるはずなのだから。
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