第51話
『ねぇ、どうやったら和子は火炉よりも僕を愛してくれる?』
子供のようなあの鬼が、自分へも問いかけた問いの答えがあれだ。
我が王よりも自分が強くなれば、和子様が愛してくれる、そう考えたのだろう。
しかしそこに、ウツワに愛されたいという願望はおまけのようなもので、雷知は和子様の心そのものを欲しがっているように僕には見えた。
それは見えただけで、明確な理由があるわけでもないが、僕は確かにそう思ったのだ。
「和子の傷のことは考えている。」
「っっ。」
王がゆるりとした口調でそう言った途端、この場の空気が一瞬で無くなってしまったかのように、息ができなくなった。
「っっ、ぁ、は。」
もがいてももがいても、僕の口はパクパクと酸素を求めるだけ。吸い込むはずの空気は一向に入ってこない。
「っっ、火炉!何をしたんですか!」
和子様の叫び声を、どこか遠いところで聞いていた。目の前がかすみ、もはや自分に意識があるのかさえ、分からない。
「不快だったからあやつの口元の空気を燃やしてやったのよ。」
「どうして、そんな!」
和子様、知らなかったのですか。我が王は本来、このような方でした。
僕は、王に会わない長い年月を過ごす内、少々傲慢になっていたようです。だからここで死ぬのは致し方のないこと。
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