第50話

そして、人を知れば知るほど、和子様をもっと好きになる自分がいた。


和子様は強い。我が王を名で呼び、対等な立場で笑っていられる、ただそれだけでその証明となるだろう。





そして何より、内に秘めるかぐわしい香りと力。




和子様がなぜ美味しそうなのか?それはただウツワである、というだけの理由ではない気がする。




和子様は人であって人ではない。しかし、人でも、あるのだ。




もちろん、和子様を僕も食らいたいと思うことはある。和子様から香ってくる匂いは僕を惑わせ、理性を奪おうとする。




だけどそれに抗ってでも、一緒にいたいと思わせてくれるこの方の傍に、いつまでもいたいと思う。




いつからそう思っていた?和子様が眠ってしまわれてから?それとも、王と和子様が恋に落ちてからだろうか?



いやきっと僕は、あの日、生贄として運ばれてきた和子様が王の名を口にした瞬間、僕も縛られたのだと思う。





ウツワは、鬼を縛る存在だと僕は思っている。




力に、ウツワ自身に、そして食欲に。




そして和子様はたちが悪いことに、僕たち鬼を更に心で縛るのだ。




雷知が王になったのも、心が動かしたのだと思っている。ウツワを受け入れるために王になる必要があった、なんてありがちな理由であのバカがそんなめんどくさいことをするものか。

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