第49話

「羽水、私は、大丈夫だから。」



「和子様。」





そう、王の機嫌を察した和子様がそう言ったとしても、あのいけ好かない鬼が今必要なのは変わらないのだ。



和子様の首の傷はいずれ、もっと酷くなってしまうだろう。仕方のないこと、では済まされないことだが、鬼と人が生きていくためには、人への負担が大きくなってしまうのは当然だ。




人を、研究した。



和子様のお役に立てるように、和子様を理解できるように。



本来ならウツワを研究すべきだが、なんせこの世にウツワは1人しか存在しないという。それならばウツワである和子様が眠っている間は、人でもある和子様のため、人を研究するのもありだと思ったのだ。




人を観察した。実際に飼いもしてみた。そこで気づいたこと。




人とは、なんとか弱き生き物なのだろう?ということ。





人は弱い。身体的なこともそうだし、心もそうだ。




群れていなければ孤独に蝕まれ、恐怖に負ければ勝てない相手にも牙を向く。それは勇敢にも見えるが、ただ命を捨てている愚かな行為でしかないのだ。



時にとても強い人間は生まれはしても、それはすべてではない。




特に、鬼の支配する今では、強き人間などほとんどいなかった。




それでもなぜか、人は面白い。弱く、醜く、面倒な生き物だと思っても、興味を損なわれることはないのだ。

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