第44話
「しかしなぜだろうな、息子が死んだとしても悲しくはないのに、和子、お前が私を見ないのは悲しい。」
和子の罪悪感に、ほんの少しだけの兄妹の情に、私は訴えかけ続ければいい。
「ただお前に知っていてほしい。私はお前の兄だ。」
「……す、おう。」
愛とは健気なものだ。ただ相手を想い、自らを犠牲にしてでも想い続けるもの。
私はただの人間ではない。和子もまた。
しかし、私たちは鬼でもないのだ。
人よりも崇高で、鬼よりも高みにいる。それが我々、混血の存在。
私と和子ならば、成し遂げられる。
「和子、いつでも遊びにおいで。私は帝都でお前を待っている。」
和子が私を信用していないのは百も承知。しかし、時間はたっぷりあるのだ。
時間を賭けて信頼を得よう。和子、お前の愛情すらも私のものにしてやる。
和子を腕に抱き、我々の息子が生まれた時、私は人と鬼、両方の上に立つのだ。
そして、父を、超える。
振り返り歩き出すと、背中にヒシヒシと感じる殺気。
鬼の王。この男こそ私の、最大の敵。
和子の心と力を独り占めにする、卑しき獣。
いずれお前は刈り取ってやろう。しかし今はその時ではない。
東で、もう一人の鬼の王が立った。そして私は人を率い、この鬼は残りの鬼を率いている。
まずは余興に、国盗り合戦でもしようじゃないか。そして私は最後には和子の心も手に入れる。
それまでせいぜい和子とのつかの間の幸せを堪能するがいい。漏れ出る笑みを抑えることなく、部屋を出た。
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