第42話

それなのに妹はその立場を甘んじて受け、この鬼を支配している。



我が偉大な父でさえ成し遂げられなかったこと。それは。




"ウツワを喪失している間の飢餓期を乗り越えること。"




それはどの鬼も乗り越えることなどできず、成し遂げられなかったこと。



ある鬼は力を取られるのを嫌がり、あっさりとウツワを捨てた。またある鬼は食欲に負け、ウツワを食べようとした。


そしてある鬼は、次のウツワを望んだ。




それがどんな結果を生んだのか、すべてを知っているわけではないが、それぞれのウツワ達が子を産み継承させているのは紛れもない事実。




こうして和子がウツワであることが証拠だ。




ウツワは1人しか存在しない。そしてウツワは子を1人しか成さない。





それなのに和子は、この鬼に選択させた。





食欲よりも自分への愛を選ばせたのだ。





喉が鳴る。和子こそ、我が父が求めたウツワ。




鬼を強くし、飢餓にも負けず力を与え続けるウツワだ。





そして、俺にとっても。




「和子。」



名を呼んでも、和子は一瞬俺を見るだけで目を逸らしてしまう。こんなにも俺が求めているのに、和子は俺を見ない。





---俺が、片鬼だからか?




「そうあってたまるものか。」




私は、家族が欲しかった。



ウツワの妻と、強き半血の子が。

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