第41話

side 周防





「火炉は、すべてのことに関して揺らぎません。だけど私のことになると例外のようです。」


「ん?俺がどうした?」




どこか、おどおどしていた。私という存在に怯えているように見えていた小さな我が妹。



しかし小さく、守らなければ潰れてしまいそうなほどか弱いはずの和子は、この鬼が関わると人そのものが変わる。そして、今も。




「え?眠る私を見て泣いていたと聞きましたが。」



「っっ、誰だそんなでたらめを言ったのは。月夜か!」



「ふふ、冗談を言いましたのに。本当なんですか?」



「……俺を嵌めるとはいい度胸だ。」




ある時は妖艶な悪女に。そしてある時は純粋な少女に。そして、今は。




「私にふさわしい鬼がいるとしたら、あなたしかいません。理由は簡単です。私のために涙を流せるからです。」




そのすべてを持ち、凛と佇むその姿は、夢絵巻やおとぎ話で聞くウツワとは程遠い。




ウツワとは本来、鬼に力を与える崇高な存在。それなのに彼女たちの扱いは食料である生贄よりも酷いものだ。




彼女たちは鬼から自分勝手に愛を与えられ、最大の幸せと引き換えに力を分け与える。その後に訪れる裏切りは彼女たちに血の涙を流させ、ただゴミくずのようにその命を終わらせる。




鬼の流す血の涙は、彼女たちの怨念に呪われているからだと言われるほど、ウツワという存在は悲しく儚いものだ。

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