第40話
「そろそろ、自覚した方がいいと思ってね。」
「なにをだ?」
火炉の背中越しに聞こえる周防の声は自信に満ち溢れていて、そのはっきりとした声は私の脳内にゆっくりと浸透する。
「ウツワとして王と一緒にいたいのは分かる。しかし果たしてその鬼が、お前に見合う鬼であろうか?」
周防は私を引きずりだそうとわざと頭にくることを言っているのは分かっている。分かってはいてもやっぱり、腹は立つもので。
「ふむ、候補など他にもごまんといる、と?」
だけど火炉は、なぜだか楽しそうに周防を見据えた。
「当たり前だろう?ウツワとは、鬼に崇められ、乞われる存在だ。」
「ふーん?」
そして、私の手を引いて、私の顔を伺う。
「どうだ?俺はお前にふさわしい鬼か?」
そう聞いてくるのに、なぜか表情は自信満々。思わず、笑っていた。
「ふふっ、そうですね、ふさわしいです。」
「そうか。どうだ?」
ふんぞり返る火炉は周防を見て目を細めた。そんな火炉を見て周防も苦笑い。
「そういう話では、なかったはずだが。」
「ええ、そうですね。」
周防の目的は分かっている。火炉からの私への愛情は本当かどうか分からない。だから兄妹である自分を信じた私に火炉を見限らせたいんだ。
「その自信がどこから来るのか。理解できないな。」
私も、同意見。なぜ血が繋がっているというだけで、私が周防より火炉を信じると思うのだろうか?
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