第36話
もし私が、地獄に行ったらどうなるんだろう?実の父からの愛を糧にウツワとしての責務を果たす?そんなのありえない。
私はウツワだけれど、ウツワのすべてを知っているわけじゃない。だけどなんとなく分かることもある。
ウツワへが必要とする愛は、家族愛でも、友情でもない。
純粋な男女の愛情。自分への伴侶への愛が必要とされる。
私はそれを、体で、心で分かっている。それだけはなぜか確信しているの。
だとしたら、父は、なぜ私を欲しがるの?母を捨てた鬼が今更私に家族としての愛情を求めているわけじゃあるまいし。
それに、周防を見ていれば分かる。少なくとも私の父は、愛なんてものからは程遠い鬼なんだと思う。
そんな彼が周防を遣わしてまで、それも長い長い年月を待ってまで私を地獄へ行かせたがっている。その真意は分からないけれど、少なくとも良いことにはならないのは分かっていた。
その、手先。
それが実の兄であることはとても悲しく、寂しいことだ。
「こんなに綺麗にせずとも好かったか。」
「今更気づいたんですか?」
「ん?お前に新しい首輪と服を買い与えるよい機会だと思ったのだ。」
「もう、正直な人ですね。」
こうして血すら繋がっていない火炉の方がよほど、私を愛してくれているなんて。
嬉しくもあるけれど、どうしても寂しさも感じてしまう。
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