第35話

「どうですか?」



「ふむ、似合っている。」



「ありがとうございます。」



周防に会う日。火炉はこの日のためになぜか首輪と服を新調してくれた。別に会うことを楽しみにしてたわけじゃないのにこの張り切りよう。絶対買い与えたかっただけだと思う。



私が周防に会うと返事をしてすぐ、彼は火炉の屋敷を訪ねてくると返答してきた。そこまでして私に会いたいのだと思えば、普通、妹として喜ぶべきなんだろう。



だけどどこか素直に喜べないのは、周防をよく知らないからなのかもしれない。



周防の最後の記憶は、私を家族として求める彼の目。今思い出してもゾッとするほど、彼の目が訴えかけてくるその感情を迷惑としか思えないのは、私の心が汚れているからなのだろうか?




だけど、周防という人を、信じることなど到底できなかった。




あの後、私が眠ってしまった後のことを火炉から聞いた。




父親である周防の心を欲しがった時の無残な死に方を。



周防は、私という家族の愛を求めていた。だけど自分は、実の息子へ心を捧げることはなかった。



その矛盾が気持ちが悪い。





それに、すべてを聞いた今では周防の私へ求める家族の絆は純粋なものじゃなかったのだと言いきれた。




私は、ウツワ。周防の目的が、地獄にいる実の父の元へ私を還すことなのだとしたら、周防は本当に私を愛しているわけじゃない。

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