だって私は、もうウツワというだけで火炉を傷つけているから。

人としての自分まで火炉を傷つける存在であるのなら私は、火炉の隣に立つ資格はない。

火炉は孤独で、悲しい、鬼だから。

だけど、それも少し違うのかもしれない。

「帝都での暮らしを気に入ったらしく、自分の国の鬼を連れて今帝都に住んでいます。」

「ほぉ、なんとも人間共には迷惑な話だな。」

火炉はこんなにも、温かい仲間たちに囲まれているから。

「……なぜです？鬼という崇高な存在と同じ国で生活できるなど、人間にとってはむしろ誉れなのでは？」

「桜土、お前は時折、そういうところがあるな。」

「なにがでしょうか？」

首を傾げる桜土を笑って、火炉がその目を羽水へと移ろわせる。

「桜土は少々、天然、な所がありまして。」

「ふふ、それも人間の真似事か？羽水。」

「そういう、わけでは。」

「ククク。」

私が来たばかりの頃とは違う。

彼らの中に育まれてきたその感情は、彼らをもっと強くしている。

だから、きっとウツワがいなくなったとしても火炉は大丈夫、そう思える。

「和子、俺たちの知らぬ内に変なことになっているな。」

「え？ええ、そうですね。」

「……和子、どうした、寂しいのか？」

「え？」

こういう時、困ってしまう。鬼は、というよりみんな、私の心を嗅いでしまうから。

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