第19話

「わ、私、は。」




私は月夜を愛している。火炉とは違うその感情はきっと、たとえ自分が死ぬことになったとしても消えてはなくならないだろう。



それなのに、私は。



ただの醜い嫉妬で月夜を殺したいとまで思う。



私は、人の道を外れてしまったんだろうか。



私はウツワ。主人である鬼の愛を受け続けなければ、存在すら許されない。



そんな私が、火炉の愛が他へ移ることを恐れるのは当たり前なのかもしれない。その相手を殺したい、そう思うのも当たり前のこと。



だけど私は、ウツワであっても人でいたかった。



そして、鬼でもなく人でもない、ウツワという悲しい存在だけしかない自分にはなりたくない、そう思う。




「良いのではないか?まるで鬼のようだぞ。」



「え?」




私の頬に手を滑らせた火炉は、食卓の上にある肉団子を一つ指でつまんで口へと運んだ。




「愛という好物のためなら、喜んで脅威を殺そう。言ってみればそういうことだ。」




指を舐めて咀嚼する火炉は、小さく笑って私の顔を近づけさせる。一瞬だけ口づけた火炉の唇からは、肉団子の味がした。




「なんだ和子、お前ウツワをやめて鬼になりたいのか?」



火炉の言葉を、考えた。私は、なにになりたいのだろう?本当にそう思ったから。

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