第17話

ウツワの人生、それは、私の人生。




私の、人生なんだ。




「和子様?」


「え?あ。」




間近に迫った月夜の無表情に、思わず後じさる。膝の上では今、火炉が爆睡中。身動きは取れない。




「お食事、されてください。」


「わ、かりました。」




なんだろう、93年経ったから?月夜の押しが、強いような。



逆らえる雰囲気なんてあるわけもない。睨まれているわけじゃないのになぜか、素直にそう言っていた。



私の返事を聞くと、月夜は小さく頷いて微笑んだ。そのあどけない笑顔は昔の面影があって、少し安心する。




月夜は知らない内に大人になってしまったけれど、やっぱり月夜は月夜で。



「和子様の好物をたくさん作らせました。たんと召し上がれでございます。」



「ふふ。分かった。」




敬語も時折変になる。それに、相変わらず私を"甘やかして"ばかりの献立に、思わず笑みが漏れるた。




好物ばかりをそろえても、体に良いとはいえない。昔は桜土によく怒られていた。



『それでも、和子様を不快な気持ちにさせたくはありません。』



そう言って私が食べたことにして、自分で食べていたのを知ってる。



ほら、今も。




「月夜、口元に赤いものが付いてるよ。」


「っっ、失礼いたしました。」




辛い物が苦手な私のために食べてくれたのだと分かるから。

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