第16話

「わ、たし、私、は。」



「和子。」




戸惑う私を腕に抱く火炉の温もりを感じながらも、ただ火炉を見上げることしかできない。




痛みの余韻のせいか、意識は混濁していてどこか夢の世界にいるようにかすんでいる。



「はぁ。」




深いため息を吐いた火炉は、ゆっくりと私の額に口づけた。




「話そう。ウツワという存在のことを。」




そうして火炉の口からゆっくりと語られたことは、私にとってとても残酷で、信じたくない話。



それでも、火炉を愛しているというのだから、私は十分にこの鬼に溺れきっているのだろう。




---、




ウツワを愛せば力を奪う


ウツワに愛された鬼はその地を統べる


与えられた力は地を割り天を割いた




役目を終えれば産み落とす


ウツワの涙は終わりを表す




ウツワを愛する王は自ら奪われ


愛するウツワよ笑っておくれ


奪い奪われ数千年


ウツワと王は愛し合う




---、




「和子様、お食事のお時間です。」




ただ一点に、火炉の寝室の壁を見つめていた。月夜の声に気付かされてもなお、私の目はひたすらに壁を見つめ続ける。




ウツワという存在。それを求める鬼との関係。



全てはあの歌に表現されていて、歌がウツワの人生そのものを表しているのだと思った。

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