第14話
side 和子
「さぁ話してください。」
様子がおかしいことは多々あった。
知らない間に93年も時が経っていたというだけでも普通ではないのに、火炉も月夜も、どこかが違っていた。
そりゃ、鬼でも93年たてば変わるのかもしれないけれど、それだけじゃ言い表せないほど、特に火炉の様子がおかしい。
嫉妬深い人だった。それもそう。私は火炉の妻だけれど同時に食料でもある。鬼は食に対する執着がすごい。
人の感情を味として嗅ぎ分けられるだけじゃなく、その味にも好みが存在する。
だけど火炉にとって私は唯一、好物の味以外も美味しく食べられる存在。
それを別の鬼に狙われているとしたらすぐさまその首をはねてしまうだろう。
だけど、雷知は、本人は認めていないけど火炉の親友で、お互いを認め合う仲。こんな、私が名前を呼んだだけで周りを燃えつくすような嫉妬はしなかった。
火炉の、私に対する執着が増している?いえ違う、これは。
ただの嫉妬じゃ、説明がつかない。
寝床に座る私をまっすぐに見下ろす火炉は、相変わらず服をきちんと着ない。かろうじて
そのせいで露わになったままのひっかき傷は、いまだくすぶる溶岩のように熱く存在を主張していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます