第14話

side 和子





「さぁ話してください。」





様子がおかしいことは多々あった。



知らない間に93年も時が経っていたというだけでも普通ではないのに、火炉も月夜も、どこかが違っていた。




そりゃ、鬼でも93年たてば変わるのかもしれないけれど、それだけじゃ言い表せないほど、特に火炉の様子がおかしい。





嫉妬深い人だった。それもそう。私は火炉の妻だけれど同時に食料でもある。鬼は食に対する執着がすごい。



人の感情を味として嗅ぎ分けられるだけじゃなく、その味にも好みが存在する。



だけど火炉にとって私は唯一、好物の味以外も美味しく食べられる存在。





それを別の鬼に狙われているとしたらすぐさまその首をはねてしまうだろう。




だけど、雷知は、本人は認めていないけど火炉の親友で、お互いを認め合う仲。こんな、私が名前を呼んだだけで周りを燃えつくすような嫉妬はしなかった。




火炉の、私に対する執着が増している?いえ違う、これは。




ただの嫉妬じゃ、説明がつかない。





寝床に座る私をまっすぐに見下ろす火炉は、相変わらず服をきちんと着ない。かろうじて直垂ひたたれは着ているけれど、上はほぼ裸も同然。




そのせいで露わになったままのひっかき傷は、いまだくすぶる溶岩のように熱く存在を主張していた。

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