第13話
しかしやはり、気に食わない。
和子が俺以外のことで乱れ、愛し、笑うことがあるとすれば、この月夜という存在にだろう。
このか細き小さな手で拾い上げた月夜という従者は、ただ和子だけを仰ぎ見、和子にのみ忠誠を誓っている。
そうさせたのがウツワの血の効力なのかどうかは分からんが、これだけは言える。
この俺が、目障りだと思うほどには、この小鬼は力をつけているということ。いや、"他"も、か。
「和子様、手当を。」
やや強くそう言った月夜の視線は、和子の首筋へと向かっている。
先ほど、俺が冷静を欠いて欲望のまま食らいついたそこには、深い傷が刻まれていた。
「私は、あとでいいんです。」
「そうはいくまい。俺よりも重症かもしれぬだろう?」
「そんな、ことは。」
俺の体についた傷を認めた和子は、小さくため息を吐いた。
「雷知に、治してもらいましょうか?」
「っっ。」
なぜだろう。和子がその名を口にするだけで、俺の中の憎悪が膨らむ。それは抑えきることもできずに業火となって俺たちの周りを包み込んだ。
「月夜!」
和子が熱さに目を細め、月夜の身を案じる。それすらも気に食わず、火は更に燃え広がった。
「っっ、火炉!」
頭の中どこか、和子の声を聞いていた。そして唇に感じた甘さに気が付いた時には、俺たちの周りはすべて燃え尽きていた。
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