第61話

「相変わらず、失礼なこぶたですねぇ。」


「す、すいません。」




春さんのすぐ後ろまで迫っていた三井さんは、それが当たり前であるかのように空席に腰を下ろす。



「壮士くん、コーヒー?」


「はい。ありがとうございます、咲さん。」


「ん。」




突然ワープしてきたその存在に驚きもしていない咲さんとそんな会話を交わしたあと、三井さんは春さんに笑いかけた。




「あなた、基本誰かに見られているでしょう?ある程度の邪魔な者は排除しているでしょうが。」


「まぁ、そうだけど。」




んん?なにやら物騒な話をしているような。き、気のせいと思うことにしよう、うん。




「彼女の場合、いつ見られてもいいように、丁寧に接してくれているのだと思いますよ。」



「え、私、そんなすごい人間じゃありませんけど?」




は!思わず口が動いていた!私の否定の言葉に、一瞬笑顔を固まらせた三井さんがじっと私を見つめる。



お、おかしいな。背後にゴゴゴゴゴゴ、って文字が見えるんですけど。




「なかなかやりますねぇあなた。そこまで春のことを考えて行動しているなんて。」



「えーと、いえ、そんな、すごいことをしているつもりはありませんからー。」




ここは、合わせておかないと色々まずい気がする。私の本能がそう語っていた。

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