揺れるはずもなく

第62話

side 春




「おや、もう降参ですか、こぶた。」



「え!あっ、まぁ、そうですね!」



「……チッ。」




華は怖がりで、壮士のような裏世界の人間がすこぶる苦手だ。


今だに本家に行くと最初から最後まで震えてるし。まぁ、それはそれでものすごく可愛いからいいんだけど。



だけど不思議と、壮士との間に壁はないように見える。




もちろん、壮士を怖がってはいるが、なんというか、他とはなにかが違うというか。



うまく説明できないが、どうやら華と壮士は馬が合うらしいと推察する。



すっげー、面白くないのは当たり前なわけで。でも自分の友人と華が親しいことは喜ぶべきことでもある。



今もほら、突然投げ出された感満載の華の発言に壮士が舌打ちを繰り出した。こいつが舌打ちするって結構珍しい。



怖がってはいても華は案外、壮士のことをきちんと攻略できている気がする。




ところで。



このカオスな状況をなんとするのか。華の両親は、突然現れた壮士に興味津々な様子だ。こいつをどう説明する?俺の友人ってだけでいけるだろうか?



さすがに、一般人である華のご両親に新城組若頭付き秘書の三井壮士です、とは言えないな。



南の人間が新城のことをどれだけ理解できているかは分からないし。

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