第54話

あああ、咲さん、私にとってのあなたは氷河期に咲く一輪の花です。




この残念なメンバーの前、凍える私を見つめるその笑顔は、一気に心を春へと導いてくれます。




「なに変な顔してんの?気持ちわるーい。」


「……。」



ま、まぁ、咲さんが素敵ってことよ。





「ところで、泊まらないにしてもさ、紹介はしてくれるんでしょ?」



翼の問いかけに、いいよー、なんて軽い返事はできそうにない。春さんを紹介するといっても突然のことで、うーん。



「とりあえず今日はもう遅いから。明日できればってところでいいんやないかね?」



「えー。」




つまらない。と呟いた翼。



「早く会いたかったのにな。」




続いた言葉はまるで、長い間会えなかった恋人に会えなくてすねているみたいで。




「っっ。」




嫌な記憶が、頭の中に一気に広がった。




そんな私を見ている翼は、クスリと笑みを溢す。その笑い方に、怒りがこみあがる。




「はい、どうぞ。」




すると突然、目の前にケーキセットが。ホカホカのカフェオレと、チーズケーキ。ちーず、けーき。




「いただきまーす。」


「ふふっ、はい、召し上がれ。」


「ん。んんー!美味しいー!」




すべてが吹き飛ぶほどの美味しさにもう、なんでもいいような気がしてきた。

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