第50話
何となくでお母さんたちが探し当てたにしては、少々遠い場所な気がしたけど、それはなにかの縁なのかも?なんて思ってしまう。
【H】は、大好きだ。店主の咲さんは素敵な人だし、ケーキもコーヒーも絶品。そして何より、私と春さんの思い出の場所でもある。
付き合いたての私たち。春さんは有名人だから、どこに行っても邪魔が入る。そんな時、個室もあるあのカフェを春さんに紹介されて、行ったのがきっかけ。
「あー、久しぶり。」
店の前で立っているだけでお腹がすいてきた。コーヒーの香ばしい香りを嗅ぐだけで、翼がいることによるストレスが和らいでいく。
ドアを開けると、聞きなれた鈴の音。喫茶店のお決まりの鈴なのに何でだろう、聞きあきない。
「ちょっとー。華遅い!」
「……。」
うん、まだまだ大丈夫だよ。私は心が広い。心が広い。落ち着いています。まだ。
「ごめん。仕事だったから。」
「どうせお皿運ぶだけでしょ?別に忙しい仕事でもないじゃん。」
腰に手を当てて相変わらずフルスイングで暴言を吐きまくる翼。
相変わらず綺麗。だけど、なんで、だろ。
「華に聞いて欲しい話がたくさんあるんだよね。座ってよ早くー。」
「ああ、うん。」
昔ほど、自分が嫌にならない。
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