第49話

『まぁと言っても、今回は全面的に私たちが悪いね。』



『は?おばさん、なに言ってんの?』



『サプライズだからってなんでもしていいってわけじゃないやろう?翼ちゃんもついてくるのはいいけど、突然華の家に泊まりたいなんて非常識やろ。ちゃんとホテルに泊まりなさい。』



『えー。』




だけど、私を支えてくれていた人たちは、翼がいたとしても、ブレない人たちだったから。



両親に、みどり、みんな、私も翼も、対等に見てくれていた。それだけで私は、もっと卑屈な人間にならずに済んだんだ。




『だって。華ともっといたいし。』



『だからって相手の予定も聞かずになんてだめでしょ!だからクビになるんよ!』



『ちょ、おばさん!』



「クビ?」





突然、ブツリと切れた通話。クビという言葉が聞き間違いじゃなければ、翼は向こうの会社をクビになったってことかな。




同情はするけど、納得している自分が怖い。翼といるとどんどん嫌な人になっていくな私。



本当ならちょっといい気味だと思っちゃったし。





どちらにしろ、翼はしばらく滞在することになりそうだ。すぐさまお母さんから送られてきたメールには、【H】という喫茶店にいると書かれていた。




「咲さんの喫茶店!ちょうどよかった!」



現金なことに、あれほど行きたくなかったのに咲さんのケーキが食べられると思っただけで腰が軽い気がする。

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