第47話

思わず黙り込んでしまった。同棲してるとはいえ、春さんに断りも入れず突然来た親を泊めるなんて、非常識すぎるでしょ。しかもほとんど会っていなかった昔馴染みまでなんて。





『同棲してんのにそんなことまで遠慮するとか。ほんとにうまくいってんの?』




翼が喋るたび、感じることだ。ああ懐かしいなこの感じ、なんて他人事にそう思う。



翼の常識と私の常識に、大きなズレがある。昔はそれでも黙って付き合っていたけど、社会人になってからはそうもいかない。




「翼がどう思うかは分からないけど、少なくとも私は、突然なんの連絡もなく来たただの知り合いを彼と住んでる家に泊めることはできないよ。お父さんたちはちゃんと宿を取ってるじゃない。それが当たり前で、普通のことだよ。」



『は?』




翼の声が低くなる。押し黙った電話口の向こう側ではきっと、頬を膨らませてるんだろうな。



昔はこれが、みどりの役割だった。常識でありえない。華が可哀そうでしょ、なんてよく説教してくれていた。




何も言えなくて、翼に振り回される私と、それを注意してくれるみどり。翼は頬を膨らませてみどりとけんかをしながらも、相変わらず私たちを振り回していた。




それでも少しくらいは、私は翼に友情を感じていたのに。



それは突然、翼によって裏切られたんだ。

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