第46話

両親はいいんだけど、問題は翼だ。なんで日本にいるのかは分からないけど、翼の事情によっては両親とまるっと一緒に過ごすことだってあり得る。



しかも、両親からもうとっくに聞いているはず。




春さんの存在を。




起き上がって部屋を見渡してみる。始めはなにもなかったこの家にも、私の物がたくさん増えた。



新城の家族はここには来ない。春さんが入れたがらないのを知っているし、だからといってそれを気にする人たちじゃないからいいんだけど。




もちろん、春さんの親友の三井さんもここには来たことないからこの家の中を知っているのは庭師の夫婦と私と家主である春さんだけということになる。




そんな空間に、翼を入れる?普通に嫌だな。




なんて、そんな嫌なことを考えている自分が嫌だ。




とりあえず、お母さんの番号をタップする。




『はいはいー。』


「お母さん?今家に帰って来たんだけど、喫茶店の名前言ってくれたらそっちに行くけど。」


『あー、そうねぇ。ちょっと、待って。あ。』


『はなー?』




どうやら、お母さんがスマホを翼に取り上げられたらしい。電話越しに聞こえた声に、うんざりする。




『華の家があるのになんで私らホテルなわけ?泊めてくれてもいいじゃん。』


「……私の家じゃないし。」


『えーでも、住んでるんでしょ?』

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