第42話

無神経だけど根はいい子だよね、なんて若かりし頃は思っていた。



その無神経さがいわゆる計算から来る腹黒とかならまだよかった。本人が自覚しているからまだ、ね。だけど、翼は本当に人の心が分からない、というか。




自分が満足するためなら、手段を選ばない、そんなタイプだった。




そして最悪なことに、私が大好きだ。


人に好かれることは嬉しい。だけど翼にとっての私への好意は、その意味の通りに取ると痛い思いをする。




「はぁ。」




両親と翼がいなくなったことを確認して、家に向かった。門の横にある認証ボタンで暗証番号を入力する。すると、電子音が鳴った後門がゆっくりと開いた。




相変わらず吸血鬼でも出そうな門構えだなと思いながら中に入れば、私が通った後門はゆっくりと閉じる。




見た目の割に最先端なそれをもはや振り返ることもせず、近くに停めてあるカートに買って来た荷物を乗せた。




春さんの家は広大な公園の真ん中にぽつんとある。とても綺麗で可愛いけど、欠点もある。




それは、スーパーわっしょいに行ってここまで来る道のりくらい遠く感じるこのレンガの道だ。




とにかく遠い。果てしない。車で乗り入れる春さんと違って、歩いて移動する私にはまさに苦行。

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