第38話
そこで働く貧乏性。通り過ぎるバスか、歩いて15分か。
そこで迷いもなく歩く私は、ちょっと残念な気がする。
ゆいかさんならここで優雅にタクシーでも呼ぶかな。いや、あの人はきっと公共の乗り物に乗れない、乗せてもらえないだろう。新城組の姐なのだから、当たり前のことだよね。だから考えるだけ無駄だ。
黙々と歩いていると、色々なことを考えてしまう。春さんは今ちゃんと仕事してるかなとか、夕食間に合うかな、秘書さんを困らせてないかな、なんて。
あ、最近咲さんのカフェに行けてないな。春さんの帰りが遅い日に行っちゃおう。そんなことしたらまたすねるかな?
そういえば家にシャンプーがなかったな。春さんお気に入りのやつだから自分じゃ買えない。注文してもらわなくちゃ。
そういえば、あのシャンプーってメーカーは?明らか英語ばかりなんだから、そりゃ日本のじゃないよね。
あーお腹すいた。帰ったらすぐご飯作らないと。春さんが帰ってくるまでもちそうにないから、さっき買ったプリンでも食べよう。
春さんの家は、少し遠い。だからこそ毎日色々考える時間が持てる。それって結構大切なことだったんだと思う。
春さんが迎えに来てくれることを悪いとは言わないけど、春さんの車で帰っている時は、頭の中を整理する機会はなかったと思う。
だから、変なことも考えてしまうんだ。
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