第32話
「じゃー遠慮なく。」
「へ?わっ!」
春さんがニヤリと口角を上げたと思ったら、強く手を引かれた。どこにこんな細腕にパワーがあるのか。私のちょいぽちゃな体はあっさりとベッドに突っ伏してしまう。
「は、春さん?」
「んんー、これこれこれ!最高!」
春さんが私を横から抱き締めて顔をグリグリとすりつけてくる。あわわ、そ、そこの肉はっ、やめて!
「はー、なんか久しぶりだなー。」
突き飛ばしてやろうと思ったのに、春さんがそんな安心しきったような声を出すから。なにもできなくなってしまうじゃない。
「なんかさー、最近忙しすぎてさ、これから華の迎えに行けなくなるかも。ごめんね?」
「……そもそも、迎えはなくてもちゃんと帰れますよ。」
「でも、心配じゃない?」
よいしょ、なんて失礼な声を出して、春さんが私を横向きに座らせる。病院のベッドは少し高い。身長が低い私の足なんて普通にプラプラ。
「華が、帰って来なかったらって思ったら、不安だったんだ。」
「春さん。」
ばつが悪そうな表情。頬を触れば、春さんは甘えるようにすり寄った。
不安なこと、ツラいこと、悲しいこと。春さんは私にはこうして素直に話してくれる。これこそ、私にとっての、完璧な春さん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます