第28話
そりゃ、倒れたんだから、そうだよね。
「ごめんなさい。」
「ん?」
ケーキの箱をそっと置いて、春さんの手を握る。少し冷たいその手は、私を温かく包んでくれていたのに。
「私が、頼りきりだったから。」
「華。」
私はそれに甘えてばかりで、肝心な春さんのことを見ていなかった。
だけど、だけどね?
「ん?なんか痛いぞ?い、いてててて。」
「私が悪いんです。悪いんですけど。」
「は、華?落ち着こう?一旦、マジで。いてて。」
こうして私が睨みつけても、春さんは誤魔化そうとヘラりと笑うだけ。確かに私が頼りきりで、だめだめで、支えられなかったからこうさせてしまった。
だけどね?さっきゆいかさんに言った通り、私はわがままで、甘えただから。
「こうなるまでなんで私に話してくれなかったんですかね?」
「う。」
だからこそ、私は怒っている。同時に、悲しかった。
「私はっ、春さんに頼ってほしかったです。」
「……華。」
手をギュッと握られても、今は悲しいだけ。だってすごく、すごく驚いた。目の前で意識のない春さんが崩れ落ちていって。
「泣かないで。華。」
「っっ。」
涙が溢れて止まらない。そんな私を抱きしめる春さんの甘い香りと、病院の独特のにおい。それにつられてなのか、涙は止まってくれない。
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