第24話

そう思うのに。




「最近、ちゃんと甘えれてる?」



「へ?」




ゆいかさんにはいつも、良い意味で裏切られてしまう。



今もこうして、困ったように笑うこの人は、倒れた息子よりも、私を心配する。




「母親の私が言うのもなんだけど、この子たちはちょっと変わってるから。遠慮なんかしてたらだめよ?」



「はぁ。」




遠慮、遠慮かぁ。確かに、春さんの隣を歩く時いつも遠慮してしまうけど。




「華?」


「えーと、私は、遠慮、してません。多分。」


「え?」




多分、私、遠慮しないからダメなんだと思うの。




「甘えちゃうんです、なんでも。ご飯も、春さんが作った方が美味しいから毎度甘えてしまうし、仕事の迎えも嬉しいから甘えてしまう。他も、細かく色々ありますけど多分、私が遠慮なんかしないからこうして、春さんは倒れてしまったんだと思います。」



「……華。」




そうなんだ。春さんがこうして倒れてしまったのは、私のせいだ。




朝食も、お弁当も、夕食も、春さんが作ったものが美味しくて、自分が作るって本気では言ってなかった気がする。



仕事の迎えも、桐子さんにおかしいとか言いながら嬉しくてしてもらってたし。




仕事で忙しいはずの春さんに気付いていたはずなのに私がなにもしてこなかったひずみが、今の春さんを招いてしまったんだと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る