第23話

「あ、りがとうございます。」




思わずおどおどした態度をとってしまう。内心ごめんなさいと叫びながらなんとか絞り出したお礼の言葉に、鉄さんは優しく頷いてくれた。




「姐さん、外におりやす。」


「ん。」




鉄さんはそう言い残すと、私と春さんそれぞれに丁寧に頭を下げて病室を出て行った。



もしかして、気を使ってくれたのかな?お土産といい、これといい、鉄さんはすごくいい人なのに。自分が酷い人間にすら見えてきた。




「さて。」




罪悪感でいっぱいの私をよそに、ゆいかさんは春さんに向き直る。




「春、自分がなんで倒れたのか、思い出せない?」



「……まぁ。」




罰が悪そうな表情の春さんが、私を見ては視線を逸らす。もしかすると、私には言いにくいのかも?



「あの、私、」



「華。」



「は、はい!」




見た目は20代にすら見えるのに、ゆいかさんからほとばしるオーラはまだ怒っているらしい。貫禄なんてものじゃない。さすが、新城組の姐を務める人。




ゆいかさんに名前を呼ばれただけで、自然と姿勢が伸びる。しっかりしなくちゃと思う。こんなすごい人の息子さんと付き合っているんだから。





こんなちんちくりんのデブじゃいけない。しっかりしなくちゃ、私!

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