第15話

それに、一番違和感があるのが、春さんの仕事のことだ。




「いつもいるんですよね。」



「どこに?」



「従業員出入り口です。」



「マジで?」


「マジで。」




新城コーポレーションの副社長をしている春さん。もちろん、普通の会社員みたいに定時であがることもあるんだろうけど、それにしても毎日はおかしすぎる。




「じゃあ今日もいるわけ?」


「でしょうね。」




今日は、シフトの関係で14時まで。もちろん、会社で言う定時じゃない。



だけど多分……。



「いるんだと、思います。」



「まさかー。」




全然信じてくれない桐子さん。事態はそんな簡単なことではないのです。



沈黙が続く中、桐子さんと見つめ合う。



「……マジで?」



頬を引くつかせる桐子さんに、頷いてみせた。




最近の春さんはおかしい。完璧な家事に、優しい笑顔。朝は必死で断ったからしていないけど、仕事の送り迎えまでしてくれる。




「家に帰ったら、一緒にお風呂に入ったあとマッサージをしてくれます。そのあと夕飯を作ってくれて、ん?どうしました?」




なんだか、桐子さんの目が、ものすごく冷たい、ような。




「ノロケ?」



そう言われた途端、顔中が熱くなった。




「や、そ、そんな、別にっ。何を言ったんだ私はー!」



「やーもう、そこまで行くと自慢もすがすがしいわ。」



「そういうわけじゃありませんー!」

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