第11話

父さんや兄貴のように俺は、暗闇に染まる覚悟もない。



なのにこうして、純白から遠ざかるような行為も簡単にしてしまう。




全てが中途半端。すべてがどっちつかず。




俺に"染まる勇気"があるなら今、華の笑顔が曇ることはないはずなのに。




「チッ。」




上手くいかない。そうしてモタモタしている内に俺は、こうして彼女を悲しませるんだろう。




傷つきやすい俺の可愛い華。守りきれないとそれは泡となって溶けてしまうのに。




俺は結局、すべてにおいて詰めが甘い。





「もっとだ。」




もっと、周りに目を配らなくちゃいけない。華を悲しませないよう、もっと。




職場も、家でも、そして外出先でさえ、もっと俺は、華を知らなければ。そうしないと華は、俺のこの腕の中から、すり抜けてしまうだろう。




そう思った途端感じた寒気、込みあがる吐き気は、今まさに俺に宣告する。





---彼女を失えば、お前は終わりだ。




その分かりきった事実を前にすれば俺は、なすすべもなく地に伏すのだろう。




「華に、会いたいな。」




華を手に入れてもなお感じる渇望は、彼女を困らせていると分かっているのに、尽きることなく湧き出続ける。




それがいつか、彼女を遠のかせてしまうと気付いているのに、俺はきっと、止まることはできないんだろう。

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