第9話
side 春
「それで?」
「大したことはされていないようですが、フロントのルームサービス係が、華様指定の客を直接、華様に回しているようです。」
「大したことは?」
「……はい?」
「
「は。」
副社長室からの眺めの良い景色を背に振り返れば、俺の第二秘書、鑑がおどおどとした表情でこちらを見つめている。
「大したことないってそれ、華が言ったのか?」
「い、いえ、そういうわけでは。」
「だよねぇ?」
思わず出た嘲笑に、鑑の肩がビクリと跳ねる。こいつは諜報活動はぴか一なんだけどなんせ気が弱い。だからこそ、人に見つからず最新の注意を払えるんだけど。
そのくせ突然大胆な行動に出たりするから、鑑を観察するはやめられないんだよな。面白い人間は、観察すれば勉強になる。やがてそれは俺の中に吸収されて、自分そのものになるんだ。
人の行動はもちろん、自分じゃ思いつかない。それはその人間が考え、作りだしたり行動するものなんだから当然。俺は少しでも、自分にない人の良さを吸収したい。それがやがて将来への糧に繋がるのだから。
別に向上心とかそんな大それたものじゃなく、ただ面白いっていう理由が大半なんだけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます