第8話

「華、疲れてる?」



「え?そんなことは。」



「嘘だね。」



「え。」





私の手を握った春さんは、さりげなくブッフェの残りの入ったタッパーも奪い取る。




「今日はこれもあるし、スープだけ作って楽して、一緒にお風呂に入ろうか。」




自分の方が疲れているはず。新城コーポレーションの副社長が、私の仕事上がりに合わせて迎えに来るなんて、とても大変なことなはずだから。




それなのに春さんは、仕事の疲れも見せず、私みたいに卑屈になることもない。



「華?」



ほんとに、敵わない、な。私が抱えている問題は、自分でも解決できるはずのこと。新城春と付き合うということは、そういうことなんだと思う。



これくらい自分でなんとかできないと私は、春さんの隣を堂々と一緒に歩けないのに。なんでそんなこともできないんだろう。




「なんでもありません。行きましょうか。」



「……うん。」





自分で歩いて行かなくちゃ。春さんという素敵な人の隣にいたいのなら、私は。




こんなこと、いちいち気にしていちゃ、ダメなんだから。





弱音を吐かない春さん。疲れすら見せないその姿勢は、尊敬してる。だからこそ、そんなすごい人と付き合っていくためにも、自分は強くならなくちゃ。そう思った。

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