第31話 『Drop』
「『忍法、空蝉の術』」
俺が持っているものが砂袋に変わる。
「…誰だか知りませんが、あまり俺を舐めないでもらいたい」
「フッ、若造が」
暗闇になり気づくと外に放り投げられていた。
オレンジの空が回る。
「クッ」
“ドンッ”
車から放り出された俺はゴロゴロと道を転がり、前を見ると黒いトラックが遠くに走って行く。
“ギュウッ”
足に力を入れ、
“バスッ”
土埃を上げ走る。
“ザザザァァァッ”
目の前でトラックから降りてくる忍者。
『しつこいですね?』
目しか分からないが、これまでの暗殺者とは違うようだ。
「俺のスマホ…返せよ?」
「…ほら」
スマホが宙を舞う。
“ギギィン”
俺の手にはミスリルソード、相手は忍刀か?
『よく反応したな?』
「目はいい方なんでね!」
“ギギギギギン”
『さて、帰らせてもらう』
「帰すとでも?」
“ドドスッ”
俺はミスリルソードをしまい左手で殴ると忍者は飛ばされて…消えてしまった。
「クソッ!………はぁ、ここはどこだよ?」
スマホを探して拾う。
画面が割れているが、なんとか見えるな。
周りを見渡すと畑で夕暮れ時だった。
スマホのGPSで探すと長野県だ。
「………どうしろってんだよ」
神奈川までどうにか帰るしかないな。
タクシーを拾うと、駅に向かい駅近くのホテルで一泊する。
次の日、電車に乗り神奈川に向かう。
「はぁ、なんでこんなことに」
なんとかSWS前駅に着くと昼前だ。
ショッピングモールを通り。校舎に入っていき。
“ピンポーン”
『はい』
「あ、五美です。宇田先生はいらっしゃいますか?」
“ガチャガチャ”
「五美君!良かったです!」
「心配おかけしました」
肩を叩かれ、中に入れてもらう。
「どうしたんですか?今までどこに?」
「長野県まで連れ去られてました」
「長野県?連れ去られた?え?誰にです?」
「『Drop』」
「な!?………わかりました。少し待ってて頂けますか?連絡してきます」
「はい」
先生はどこかに電話をし、
「それでは今日は気分を変えてミルクティーでいいですか?」
「はい」
宇田先生はミルクティーを淹れるとテーブルに置き、対面に座る。
「…美味しいです」
「はい、たまにはいいですよね」
ゆっくりとした時間が流れる。
「ふぅ、『Drop』とは何ですか?」
「…それは」
“コンコン”
ドアをノックする音に宇田先生は声をかけると入って来たのは、
「失礼します」
「鈴音さんですか」
「五美君、君はこのことを「忘れさせるんですか?」…そうか、聞いたんだな?」
鈴音さんが入ってくるなり口を開いたのを妨げる。
「そうですね、俺は忘れるつもりはありません」
「失礼、座らせてもらおう」
鈴音さんは宇田先生の隣に座る。
「さて。君はどうやって逃げられたんだ?」
「手錠を外し、男を殴り、忍者と戦って逃げられました」
「あはは、随分と端折ったね!…まぁ、逃げられる実力があるんだな」
鈴音さんは笑っているが、目は真剣だ。
「そうですね。次は俺の番です。『Drop』とは何ですか?」
「…敵対組織だ。『Drop』雫の意味もあるが、取り消すという意味でも使うな。『記憶を消された者たち』の意味だ」
「そうですか。間違ってはいないんですね?」
「そうだな。だが、相手は異世界で人を殺した人間だ。最初に話した通り人を殺した人間は記憶を消す」
最初?あぁ、そう言えば教室に戻った時に聞かれたな。
「それは本人が同意したんですか?」
「同意がなくとも消さなければならない」
それは本人の意思を無視してるな?
「それを元に戻せる人間がいても?」
「それが本人の記憶だと断定はできない」
確かにそうだ。人間の記憶を改竄できる能力があれば可能だ。
「そうですね。では、記憶を消すのも分かりませんね?」
「そう言えるな。だが、記憶消去というスキルは存在している」
存在してるならその通りだろうが、強弱はあるだろうな。それに、
「蓋をしているだけなのでは?」
「そうだな。もしかしたらそうかもしれないな」
「そうですか。やはり俺は記憶を消す事には反対ですね」
「そうか、今から君の記憶を消したいんだが?」
今さら何を言ってもか、
「俺は抵抗しますよ?そして記憶が蘇ったら『Drop』に行きます」
「………分かった、記憶は消さない」
「ありがとうございます」
「だが他言無用だ」
「それはそうですね」
「君は自分の強さに自信があるようだな?」
あぁ、少し鈴音さんを怒らせたようだな。
「そうですね」
「『収集人』とはそれほど強いのか?」
「さぁ?でも異世界で1人になってから負けたことはないですよ?」
「…君は危険だ。そこまでいうなら証明してもらおうか?」
「どうします?」
「ここのダンジョンを制覇して見せてくれ」
「はぁ、やっと制覇できる!いまからでいいですか?」
俺は喜んでいた?やっと1人で心置きなく最初からフルスロットルだ!
「…途中まで一緒に行こうか」
鈴音さんを先頭にダンジョンまで行く。
「では40階層から」
「分かった、私もついて行く」
「はぁ、足引っ張らないでくださいね」
「…手は出さない」
「いいですよ」
「五美君、君は」
何かを鈴音さんが言いかけるが、
「宇田先生、いってきます」
「…行ってらっしゃい」
俺と鈴音さんは40階層に降りたった。
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