第27話 生産職


 一応目標の30階層を突破したが、31階層のフィールド感に感動し、しばらくゆっくりしてしまった。

「ここって何が出るのかな?」

「ん?そうだな。それを確かめてから戻るか」

「だね!ちょっとゆっくりし過ぎたし」

 とみんな立ち上がると、遠くに見えるのは、

「オーガか?」

「だね!30階層でもう?」

「でも桜先輩も言ってたし、そうだろうな」

 30階層でオーガなら期待できるな!

 100階層はどんなボスだろ?

「よし!俺狩ってくるよ」

「お、おい!」

“ギュン”

 と脚に力が籠り、

“ドンッ”

 猛スピードでオーガに突進する。

 左腕をレッドドラゴンヘッドに変えると、

「『竜の顎』!」

 竜の口が開きオーガに喰いつく!!

 オーガはいきなり目の前に現れた俺に驚いていたが、左上半身を噛み砕かれ、『ガッ!!』と声を出したオーガはドロップに変わる。

「よし!終わり!」

 左腕を換装、ドロップを『収集』し、歩いてみんなのとこに帰る。

 

「レベルが違うな」

「そうね、あの速さなんなの?」

「人間離れしてる」

「あの速さなら1日でダンジョン攻略すんじゃねぇ?」

「…ありえるな」


 俺はゆっくり歩いて帰り。

「簡単だったね」

「そうな」

「スズは危ない時だけ動こうか?」

「え?なんで?」

「俺らのレベル上げにならないからな」

 そうか、それならしょうがないか。

「分かった」

 ホッとしたような顔をするみんなに悪いことしたなと思う。

「んじゃ帰ろうか!」

「だな!」

 30階層から転移陣で外に出る。


「おっ!白石達も今帰りか?」

 ヒカルが声をかけると、

「うん!ようやく教育者の人が来てくれたから今日は10階層まで行ってきたの」

 と横に立っていた男の人が出てきて、

「教育者の万場番マンババンだ。よろしく頼む」

「「「よろしくお願いします」」」

 格好から見て剣士のようだな。

「あ、わ、私宮澤玲ミヤザワレイって言います」

 と声をかけてくる宮澤、おさげの子だ。

「あぁ、知ってるぞ?あとは上野ウエノ千葉チバ四十万シジマだろ?」

 上野はお団子、千葉はショートカットで四十万は前髪ぱっつんだ。

 大人しい感じの子達だ。

「あ、知っててくれたんだ」

「まぁ、クラスメイトだしな」

「そっか、私達もごめんなさい」

「何がだ?」

 頭を下げる宮澤達。

「私達も見て見ないふりしてたから」

「あぁ、そう言うタイプじゃないだろ?気にするな」

 別に異世界であった事はもう殆ど忘れることにしている。


「う、うん、ありがとう」

 と言って後ろに下がる。

「そう言えば生産系なんだろ?」

「うん。私が薬師、宮ちゃんじゃなくて、宮澤が錬金術師、上野が料理師、千葉が裁縫師で四十万が革職人」

 と白石が教えてくれる。


「へぇ、そっか、んじゃ四十万にこれやるよ」

「ん?えっ!これグリーンドラゴンの革?いいの?」

「あぁ、防具つくるのにいいだろ?」

「ありがとう!」

 とやっぱり『収納』持ちみたいだな。

 グリーンドラゴンの革を『収納』すると嬉しそうに笑っている。


「な!…結構するだろ?あげていいのか?」

 アキが驚いてるが、

「ん?まぁまだたくさんあるしな」

「そ、そうなのか、売れば」

「売りはしないぞ?素材は大事だからな?」

「あはは、『収集人』らしいね」

 とヒカルが笑い、みんなも笑っている。


「んじゃまたな!万場さんも白石達をよろしくお願いしますね」

 とヒカルが言うと、

「分かった!君達も頑張れよ!」

「「「「はい」」」」

 と言って白石達と別れる。


「なんだかんだで女の子に甘いわよね?」

「は?俺の事?」

「他に誰がいる?ドラゴンの革なんて俺らにはくれないだろ?」

 んー、確かにあげないが、

「お前らにやったら売りに行くだけだろ?」

「わ、わからないわよ?」

「いーや、売りに行く。アカネとアキは絶対行くな!」

「「なんで?!」」

「あははは、分かる!すぐ行くな」

 ヤスとヒカルも頷く。


「クッ!まぁ、いいわ!ご飯いきましょ!スズの奢りでね!」

「なんでだよ?たまにはヒカルが出せよ」

「えー、まぁいいけどさ」

 よし!高い物から頼んでやる!

「行こうか!」

「「「「おぉー」」」」

 ショッピングモールに向かう。




「やったね!咲苗ちゃん!」

 四十万咲苗シジマサナエに喋りかける宮澤玲ミヤザワレイ

「うん!これで防具作るね!」

「五美君も太っ腹だなぁ」

 上野優里ウエノユウリがいうと頷く千葉香織チバカオリ

「あの子は五美って言うの?」

 万場が聞くと、

「はい!五美君はあっちで色々あったんですけど」

「そうそう、ほんとカッコよくなったよね!」

「「「わかる!」」」

「そうか、人気者なんだね」

「今はそうですね!」

「今は?」

「あはは、これ以上は言えませんよー」

 と笑う白石。


「へぇ、あの子がねぇ」

「万場さん?」

「いや、なんでもないよ。じゃあ5人とも気をつけてお帰り」


「「「「はい」」」」

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