第22話 冬休み


「で?ダンジョンコアを国に持っていったのがバレてこうなったの?」

 向かい合って話をする。

「俺は買取屋の仕事をしたまでだ。監視してたんだから知ってるだろ?」

 取調室にいる太陽タイヨウは鈴音に向かって喋る。


「アンタが撒かなければね」

「それは仕方ない、あちらにも挨拶しなきゃさ、いつ殺されるか分からないからね?」

「で、アンタは殺されかけながらあの子達を巻き込んだ」

「巻き込むつもりはなかった。俺はあそこで死ぬべきだったから」

「そう、その覚悟で『組織』を裏切ったのね?」

「当たり前だろ?あんないい子に助けられるなんてな」

 と椅子にもたれ掛かる。

「あー、ほんとダメだな俺は、助けてもらって嬉しいんだよ」

「はぁ、わかったからほら」

 ティッシュを渡すと一枚とって顔に被せ上を向く太陽。


「アンタが死ねばあの子達悲しむわよ?」

「………生きてて良かった………」

「…そうね」



 時は過ぎて、冬休みに入る。


「サンちゃんさん帰って来なかったな!」

「まぁ、鈴音さん達と一緒だから大丈夫だろ?」

「だな!」

 と来た時よりも荷物は少なく、土産を買って実家に帰省する。

 電車を待つのは俺たちだけじゃなく愛内や早乙女も一緒だ。

「なぁ!初詣いこうな!!」

「家族と行くんじゃないのか?」

「そりゃいくけどさ!」

「カウントダウンしたいでしょ?みんなで」

 と電車の中で騒いでいる。

 神奈川から東京までは40分ほどだから帰ろうと思えばいつでも帰れるが、一学期は帰る暇がなかった。

 こいつらもいたしな!


「だーかーらー!クリスマスはどこに集まる?」

「カラオケ行きたいね?」

「食べ放題がよくね?」

「えー、誰かん家に集まろうよ!」

「スズの家?」

「なんでだよ!うちはそんなに広くない!」

「じゃーやっぱりカラオケ?」

「だから!」

 と決まらない予定と騒ぐ車内で俺はカードに入った金がとんでもない額だったことが頭から離れなかった。

『また俺の取り分を貰いに行ってもいいかな?』

 また会えますよね?その時ちゃんと聞こう。


「なーに外見て?」

「愛内か、いや一学期早かったなって」

「ナルトでいいよ!スズって呼ぶし」

「分かった」

「あ!俺もトウマな!」

 と早乙女が顔を出す。

「あぁ、分かった!で?決まったのか?」

「うん!カラオケボックスで!プレゼントは1万くらいのを買ってくること!」

「プレゼント?」

「交換するのよ?勿論、手作りもオッケー!」

「なんだよそれ?俺しか生産系いないじゃねーか!」

「ははっ!何買おうかなぁ!」

 異世界から帰って来て楽しいことが沢山あるな。


「じゃーな!」

「クリスマスイヴだよ?間違えないでね!!」

「おう!じゃーなー!」

 とみんなと別れて家に帰る。


「ただいま」

「お、おかえりぃ!!やっと帰ってきて!いつでも帰って来れるでしょ?」

「いや、母さん、そうもいかなくてさ」

 と靴を脱ぎ上がってダイニングの椅子に荷物を置く。

「もう、まぁいいわ!帰って来たんだから!手、洗って来なさい!」

「はいはい」

 洗面所で手を洗い戻ると荷物は片付けてあり、お土産の袋だけが置いてある。

「はい、土産」

「はい!ありがとう」

 土産を開けお菓子だと分かるとお茶を入れ出す。

「はいどうぞ」

「どうも」

 2人でお茶を啜り、お菓子を開けて話をする。


「へぇ、クリスマスイヴは友達と過ごすのね?」

「そうなんだよ」

「小学生以来じゃない?」

「あー、そうかもね」

「女の子は来るの?」

「あぁ、来るね」

「彼女ができたらすぐに連れて来なさいね」

「あはは、出来たらね」

 母さんは久しぶりに帰って来たけど変わらないな。


 晩御飯を父さんも一緒に食べて、自分の部屋に入る。

 何も変わってない自分の部屋で、異世界にいたのがついこの間だ。中々感慨深いな。

「さて、一万円分ってどれくらいだ?」

 『収集』の中を見ながら何を作るか考えるが、

「ふぅ、まぁ期待されてるんだから作らないわけにはいかないんだよな」


 俺はマジックバッグを作ることにした。

 ポーチ型でベルトにつけるタイプにする。

 これなら俺の素材もそこまで必要じゃないしな!

 スマホで検索して色々とアイデアをもらう。

 紙に描きながらデザインを決めていく。

 外側に使う革はブラックドラゴンの革だ。

 

「まぁ、喜んでくれると嬉しいかな」


 翌日はゆっくり寝て起きると母さんの買い物についていく。

 LUINがペコペコと来ているが、暇だ!とか何してる?だったから無視だ。

 親孝行しとけよな!


 父親に酒のプレゼントを買い、母さんには服をプレゼントした。

「別にそんな気を使わなくていいのに」

「ん?これでも金は持ってるんだよ?SWTOからのお金も使ってないしね」

「まぁ、そうなの?でもお金は自分のために使いなさい?」

「あはは、これくらいならいいだろ?」

「んー、まぁ、嬉しいからいいけどね!」

 とルンルンの母さんを見て買ってよかったと思った。


 母さんや父さんは異世界に行ったことを少しずつ忘れて来てるみたいで、普通の学校だと思ってるみたいだ。


 本当に記憶を弄るなんてスキルはヤバすぎるだろ?

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